2010年11月27日土曜日

おべんとうの時間

おべんとうの時間
おべんとうの時間阿部 了(写真) 阿部 直美(文)

木楽舎 2010-03-30
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素敵な本を見つけました。
「おべんとうの時間」
レシピ本ではなく、働く人々のごく日常のお弁当。
日本各地で様々な職業につく方々の、お弁当に関わるエピソードを素敵な写真とともに紹介しています。
お弁当を食べる人。作る人。働くということ。
普通の毎日を丁寧に生きている方々の物語は、生きるうえで大切なことを思い出させてくれます。
心温まる、素晴らしい本です。

自身のお弁当エピソード。
思い出すのは、料理上手だった祖母と母のお弁当。
運動会には、祖母の昔の人らしいお重詰めのお弁当と、調理師の資格も持っていた母のハイカラなお弁当が並びました。
デザートも手作りで、素朴な寒天が楽しみでした。
思えば高校卒業後、進学で上京して以来、ずっと自炊をしてきました。
お弁当を持たせてもらったのは、遠い思い出。
けれども誰かが自分の心身を思い作ってくれたという事実は、いつまでも生きる力をくれるもの。
今になって、夜明け前から支度をしてくれただろう、祖母や母の愛に頭が下がります。

母になった私には、初めての幼稚園で小さな背中にお弁当を背負って登園する娘の姿。
ある時、草食恐竜と自分を同化させた娘は、突然ベジタリアンになり、お弁当メニューには苦労しました。
煮物やお揚げがメインの地味なお弁当。
それを恥ずかしがるでもなく、嬉しそうに完食してくる娘には、彼女なりの信念がありました。
今でもコンビニ食やファーストフードを食べない娘。
「料理なんてめんどくさーい」とまだ甘えていますが、近い将来自立した際には、自ずとキッチンに立つ喜びを身につけてくれることでしょう。

そして、5年前の愛知万博での思い出。
「お弁当の持ちこみ許可」は、小泉元首相の数少ない功績の一つかも知れません。
その日、私は遠足の朝のテンションで、リュックにお弁当を詰め込みました。
20年ぶりに再会した幼なじみと過ごした一日。
歩くのが遅い私は、歩くのがとても早い彼の背中を不思議な気持ちで眺めていました。
小学生の時、小さかった彼は列の前の方。
背の高かった私は後ろの方。
私よりずっと大きくなった彼だけれど、黙々と歩く後ろ姿は昔と同じ。
少年の好奇心とマチュアな強さを身につけた、世界中を旅してきた頼もしい背中でした。
時々ついて来ているか確認するように立ち止まり、振り向くけれど、また自分の心のままに歩く。
優しすぎる人ゆえに必要な距離。
その彼独特の距離感が、私にはとても心地よく、心から安らぐものでした。
けれどももしあの日、人でごった返す高価な食事処で延々と並ぶことになっていたら…
彼は多分、食事など抜いても、目的へと歩く人。
それでも彼は私を気遣い、時間をさいてくれたでしょう。
私はいたたまれなくなり、少し悲しい思い出になっていたかも知れません。
思い出したように彼が早足を止めた時、野外で頂いたお弁当。
彼の冗談に笑い、ふと静けさが戻ると、遠くから彼の好きなイエメンの音楽が聴こえてきました。
全て気持ちよく食べてくれたあと、「これで荷物、軽くなったな。」と一言。
お腹に入ったお弁当が、繊細すぎる心の距離を縮めてくれた気がしたのでした。


現在は毎朝、娘とふたり分(私はカタギの勤め人もしています)のお弁当を作ります。
あり合わせの簡単なものだけれど、忙しい職場でお弁当を開ける瞬間は、ささやかな楽しみ。
そして娘の空っぽのお弁当箱を見るのは、ささやかな喜び。
以前、仕事がもっとハードだった時には、娘には学校のカフェで食べるようにとお金を渡して済ますことがありました。
でもそんな日が続くと、娘の肌や心がささくれだってくるのです。
そして私自身も手抜きをしている事実に落ち着かず、母親業と父親業、自分の中の女性性と男性性のバランスが取れず、自信を喪失し始めます。
丁寧に生活することは、大切な者だけでなく、自分自身を愛することに繋がります。

精神分析学者フロイトは、「健康な大人の条件」を問われ、「愛することと働くこと」と答えました。
かつて高度経済成長期には、男女の役割が「世話をする人」と「稼ぐ人」という性役割で二分されていました。
交わることのない世界で生きる夫婦には、互いの孤独という心の問題が生じました。
性役割の境界線が薄くなった昨今でも、その境界線のところで互いに疲れ果て、悩む大人が増えています。

愛することと働くこと。
「おべんとうの時間」の行間には、そのバランスの大切さと、コツが描かれているような気がします。
大切な人が健やかで、頑張れるように、と願いを込めて作る幸せ。
別々の場所にいても、大切な人と同じものを食べられるという幸せ。
自分のためだけに作る、働く自分へのエールとしてのお弁当。

これからも頑張って早起きしよう!

2010年11月22日月曜日

君よ永遠の嘘をついてくれ



なのに永遠の嘘を聞きたくて 
今日もまだこの街で酔っている
永遠の嘘を聞きたくて 
今はまだ二人とも旅の途中だと

君よ 永遠の嘘をついてくれ
いつまでもたねあかしをしないでくれ
永遠の嘘をついてくれ
何もかも 愛ゆえのことだったといってくれ

君よ 永遠の嘘をついてくれ
いつまでもたねあかしをしないでくれ
永遠の嘘をついてくれ
出会わなければよかった人などいないと笑ってくれ


作詞作曲 中島みゆき
唄 吉田拓郎




Thank you, Kellie.