2011年1月9日日曜日

Compass of the Heart.



故郷で暮らしていると、知人にばったり出会うことがあります。
家族連れや夫婦連れで歩く、幸せそうで照れくさそうな友人の姿には、心が和みます。

そんな仲間同士が集まると語り合う、仕事や家庭のこと。
とりわけ、気がねなく語られる男性陣の奥さまへの想いは、セラピストとしてとても興味深いもの(ごめんなさい)。
それにしても。
男性とはいかにロマンチストであることでしょう。

夫や恋人を持つ女性から語られるのは、具体的な事柄への不平や不満が圧倒的に多く…
いわゆる、「~してくれない。」という類の要求。
つまり、相手が言動と行動を改めれば済む、現実的な話。

ところが男性陣の言葉には、「彼女にはこう在ってほしい。」という夢見るような切なる要望を感じます。
彼女が子どもを叱りつける姿を見たくない。
優しく声をかけてほしい。
甘えてほしい。
頼りにしてほしい。
決して妻には直接そう注意しないだろう、彼らの思いやりと、妻には永遠に「夢の女性」であってもらいたいという純粋さ。

そういえば、「永遠の嘘をついてくれ」に関して、吉田拓郎はこんなことを。
「出逢った時の森下愛子という女性は、無口で美しく、とびきりミステリアスだった。何十年夫婦として過ごした今でも彼女にはそうあってほしいんだ。」

ユング心理学でいう元型。
Anima(男性の精神内面にある理想的(象徴的)な女性像(女性イメージ))を強く感じずにはいられません。

アニマについては、次回に改めて。
*以下参照
http://digitalword.seesaa.net/article/17618983.html

仕事、家事、育児に追われ、髪振り乱して頑張っている私に優雅にしろですって??
じゃああなたが家事をやれば??
仕事だけして寝てばかりのくせに、頼りになんてできるわけないでしょ!
そんなキツイ声も聞こえてきそうですが…

岡本太郎さんのエッセイに、こんな女性のエピソードが登場します。
パリで岡本氏と同棲していたフランス人女性。
彼女はお勤めから戻ると、一日絵を描いていた彼にこう言うのだそうです。
「タロウ、お散歩でもしていらっしゃいよ。」
彼はワインなどを買い、ぶらぶらと気分転換をして帰宅します。
すると部屋はこざっぱりと整えられ、彼女は女性らしい服装に着替え、彼をお出迎え。
「お掃除しているところなんて、見られたくないわ。」という彼女の美学。
この後の2人の時間がロマンチックであろうことは、いうまでもありません。

森瑤子さんの本にも、魅力的な女性が登場します。
NY某大手ファッション誌の女性編集長のエピソード。
「自分が気持よく仕事をするためには、夫に機嫌よくいてもらうことが大切なのよ。」
と夫が帰宅する前には必ず帰宅し、大急ぎで着替え。
グラスを片手にさも何時間もくつろいでいたかのように「おかえりなさい」を。

そして、こちらは夫からいたれりつくせりの、ある女性。
彼女の夫はとにかくよく気がつく男性で、妻の荷物を持ったり、洋服をかけたり。
ジェントルマン精神を発揮して、かいがいしく妻の面倒をみるのだそう。
ところが当の彼女。
本当は決してか弱いタイプではなく、むしろ僻地にだって一人で旅するようなタフな女性。
けれども夫がしてくれることに一切口を出さず、ただ「ありがとう」と笑顔で感謝を。

このあっぱれな3人の女性の共通点は、とても自立した女性だということ。
自分の足でしっかり立っていて、自分の幸せの責任は自分で負っている。
与えることも受け取ることも上手。
タフでクールなロマンチスト。
そして愛するパートナーや家族の一番の理解者であり、彼らとの時間を何よりも大切にしているということ。
かといって、例え裏切られてもそっと歩み去るだけ。
誰かの心や人生を所有することなどできないと知っているのです。

愛情深いけれど、その愛情は意識的にも無意識的にも支配性がなく、母ー息子関係のような共依存関係に陥ることはありません。
我を通すことのない素直さと知性は、男性の能動性を尊重します。
孤立を自立と履き違え、一人頑張り過ぎる女性が学ぶべき女性らしさです。
2人乗りのボートのオールを一人で漕ぐ女性の心の奥底には、相手への不信感があります。
そのような女性の前では、男性は自信を喪失し、能動的に行動することができません。
まさに息子を呑み込む恐ろしいグレートマザーの一面です。

単に「尽くし」「待ち」「相手に合わせている」だけならば、それは根深い愛情希求を内包するナルシズム。
上記の女性たちには、そのような暗さは皆無です。
自分の世界を充実させ、輝き、男性に大切に扱われ、愛されている女性はとても美しい。
イメージは、ヘミングウェイが生涯かけて愛した人妻、深い愛情で家庭を守りぬいたマレーネ・デートリッヒ。

家庭を持てば、誰もがこなすべき労働に追われます。
だからこそ、一日の終わりに夫婦で過ごす短い時間はとても貴重。
夫、妻、父、母、仕事…全ての仮面を捨てて、ただの男女に、親友に、同志に戻る時。
その時間を充実させる工夫を、自分からパートナーへ提案してみませんか?

一人の異性と長い旅路の過程で共に成長していく。
寝食を共にし、変化のない日常と他愛ない会話を繰り返し、喜びを共有し、試練を乗り越える。
結婚は、学びの多い形態です。
与えられたこの体とこの心で生きる人生は、たった一度きり。
愛する人と過ごせる時間などあっという間。

出逢い、結ばれた奇跡を思い出して。
どうかいつまでもお幸せに。。

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2 件のコメント:

  1. 生活しているとよく不満を感じることがあります。それは、周りに多くのことを求めているからなのかもしれません。
    初めて「人と過去は変えられないが、自分と未来は変えることができる」という言葉を聴いた時、なるほどなぁと感心したことがありました。野口嘉則著「鏡の法則」にも、今の自分がおかれている状況は「鏡に映し出された姿」であると定義し、それを直すのは鏡に映った自分だというニュアンスのことが書いてありました。
    確かに周りに不満の扇動するよりも、自分を変えることの方が解決の近道なのかもしれません。でも、言葉で言うのは簡単ですが、実際に自分が変わることは大変なことですよね。
    大変という言葉は「大きく変わること」と書きます。変化のスピードが激しい時代に、自分を諦めることなく少しずつ進化していきたいものですね。
    Lupin the 3rd

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  2. 慣れ親しんだ自分を変えることは、大変ですね。
    でも人は、変わらないまま、ずっと同じやり方で生きていくことの方が難しいのかも知れません。
    生き辛い時、心は必ず別の道を探します。
    心と外界の共時性は、通過儀礼となる出来事を引き寄せます。
    渦中にいる時にはただ必死ですが…
    急がず、焦らず、死と再生をやり遂げていけたら、と思います。

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