2010年4月15日木曜日

Flamenco

フラメンコの素晴らしいアーティストを紹介します。

まずはアントニオ・ガデス。
世界的にも有名な舞踊家である彼は、ヒターノ(ジプシー)ではなく、生粋のスペイン人です。
生まれた時からフラメンコを子守唄に育つヒターノと違い、彼は舞踊学校で踊りを学んだダンサーです。
彼の踊りを初めて目にしたのは、映画「Los Tarantos バルセロナ物語」(1963)でした。
彼の役は、悲恋に翻弄される主人公の親友。飲んだくれのプレイボーイ。
美女を伴い、夜な夜な街で遊び続ける彼が主人公のギターで踊りだす。
このシーンを見た時の衝撃と感動は忘れられません。




ジーンズ姿で街かどで踊る彼の美しさと優雅さは、目を疑うほど。
その完璧な動きの合間、制止した瞬間に醸し出すあたりを祓うような雰囲気は、誰も真似できません。
まさにフラメンコの神様。

そしてどこか影を感じさせる風貌通り、貧しさの中で育った彼の根底には「怒り」があったといいます。
舞踊家であると同時に革命家でもあったガデス。
2004年、68歳の若さで生涯を終えました。
その遺灰は故人の遺志により、キューバ革命戦士の墓に葬られています。

ガデスと次に紹介するパコ・デ・ルシアは、土着的で民俗的な文化だったフラメンコを洗練された芸術の域まで高めた人物として高く評価されています。
けれども、あくまでも「ありのままの人間を表現する」という、フラメンコの真髄を追求するのが彼らの理想だったそうです。

映画の曲は Farruca ファルーカ。
主に男性舞曲として演奏されます。
北スペインの民謡がアンダルシアの人々によってフラメンコ化された、比較的新しいスタイルの曲と踊りです。






2人目はフラメンコギタリストのパコ・デ・ルシア。
彼もまたスペイン人で、世界中のギタリストの憧れです。
貧しかった幼少時代、彼はある日突然父親にこう告げられたそうです。
「財産を叩いてギターを買ってきた。今日から学校へは行かなくていいから、一日中ギターの練習をしなさい。」
彼のギターの魅力は、あふれだす情熱を抑制するようなアンビバレントなところ。
愛知万博の彼のステージでこの曲を聴いた時には、涙が止まりませんでした。
フラメンコギターの音色は、何よりも胸を締めつけます。

曲は Tangos タンゴス。
カディス発祥、ノリのいい2拍子の曲です。
演奏は、Paco de Lucia & Sextet
少年のせつない片思いを唄っています。
カンテ(唄)は、パコ・デ・ルシアの弟、Pepe de Lucia (ぺぺ・デ・ルシア)。
ルシアは、彼らの最愛のお母さま。
ラテンの男の人って、可愛いですね。






そして最後は、セビージャの代表的な舞踊家。
今も優れた指導者としてご活躍の Matilde Coral マティルデ・コラルです。
近年は、足や体の動きが男性化され、より力強いフラメンコバイレ(踊り)が主流。
でも彼女の振付スタイルは、あくまでも伝統的で、女性らしく、柔らかな踊りです。
この動画を見ても、女性の体と、その動きの美しさが最大限に引き出されています。
女性の美しさと力強さ、温かさが同居する、憧れの女性です。

曲は「歓び」という意味の Alegrias アレグリアス。
バイレと同様、とても魅力的なのは、一番を唄う Chano Lobato チャノ・ロバートの温かな歌声。
彼もまた素晴らしい伝統的なカンテ(唄い手)さんです。


フラメンコの魅力は一言では表せませんが、私が魅かれるのは、悲しみや苦しみを内包したうえでの明るさや強さ、つまり「生命力」。
クラシックバレエが、上へ、天へ、人間を超えた存在へと向う踊りなのとは対照的に、フラメンコはより力強く大地へと根ざし、人間らしく在るイメージです。

春になると無性にフラメンコを踊りたくなり、部屋では一日中曲を流しています。
家事の合間に突然踊りだしても、我が家の猫たちは慣れたもの。

目下のところ。
夢は、踊り仲間とセビリアの春祭りで踊ること♪

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